黒猫【二】

4/8
前へ
/56ページ
次へ
   今日と明日は、この家に一人……。つまんないなぁ。  ふと、昨日の黒猫の事を思い出した私はまたニヤリと笑う。一人なので笑みを隠す必要は無い。笑った瞬間、急に強い視線を感じて身を震わせた。  ……何? 今の。  慌てて周りを見回すが、私以外誰も居る筈が無い。テレビから映像が流れ、音声が僅かに響く、いつもと何も変わり無いリビングが私の目に映るだけだった。  ……気のせいよね。  そう判断した私だが朝食を食べる気が急に失せ、とりあえず焼魚だけを口に放り込んでテレビを消し、食器を片付けた。  ──暗くなったテレビの画面に映るリビングと廊下を隔てるドアの隙間から、私を恐ろしい形相で睨む女性の存在に気づく事なく……。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加