黒猫【二】

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        「……ゆる、さない」 「えっ……」  突然、私の直ぐ後ろから聞こえてきた……低い、潰された喉から絞り出すような低い声。  その声の主を確認する為に振り返ろうとした私だが──  突如体に、浮游感を感じた。  理解したのは、浮游感を感じた直ぐ後──そう、私は何者かによって車道に投げ出されたのだ。  投げ出されたおかげでバランスが取れず、車道の真ん中で尻餅をついた私は、痛みにそのままの体勢で動けずにいた。  偶然この道を通りかかった何人かが、私と何かを交互に見て叫び声を上げるのが見える。次いで聞こえた……車の音。  ハッと横を見ると、頭に直接響くブレーキ音と共に、直ぐ其処まで迫る車が視界に入った。  私に車が迫るまでのほんの何秒間が、スローモーションを見ているような感覚に陥る。  キキィ━━━━ッ  ──……車のバンパー部分が、私の眼前にある。辺りには、急ブレーキを踏んだ時にタイヤと地面の強い摩擦で出来た煙が漂っていた。  どうやら私は、寸でのところで助かったらしい。
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