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そういえば、あの時の猫も黒猫だったっけ。……ああ、思い出すだけでまた腹が立ってきた。
そんな事を思いながら黒猫への視線を睨みに変えた。黒猫はそれでも、動かないで私を見つめ続ける。
「……見てんじゃないわよっ、猫のクセに」
茶髪のセミロングで、緩く巻いた髪を手で横にかきあげながら呟いた。勿論、猫なので言葉なんか通じる筈も無く。
全く視線を外そうとしない黒猫に苛立ちを感じる。そこで、ある事を思いついた私はニヤリと、口の端を上げた。
黒猫が逃げないかどうか試す為に、一歩近づく。黒猫は……動かない。また一歩……それでも動かない。
一歩一歩、近づいて遂には、黒猫のすぐ目の前まで来た私。黒猫はそれでも動かずに私を見つめ上げていた。
口の端が、更に釣り上がる。
そのまま上体を傾けた私は、黒猫の首元を摘まむように持ち上げた。普段なら見る事すら拒絶する為、絶対に触る事なんてしないが、この時はこれからする"事"が楽しみなので気にしなかった。
私の目の前まで、黒猫を持ち上げ……一言、呟く。
「アンタも、私と同じ思いしなさいよ」
そう呟き、私は黒猫を……
私がいる歩道の隣の道……車道に投げつけた。
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