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元々車通りも人通りも少ない道だが、この時だけは違った。猫にとっては不幸、私にとっては運良く車が向かって来た。
投げつけられたにも関わらず、見事着地をした黒猫だが……車はもう、黒猫の目の前まで来ていた。避けれはしない。
キキィ━━ッ
車から聞こえたブレーキ音。──その後に聞こえてきた、黒猫が車にぶつかる鈍い音……そして、きっと空中に飛ばされた黒猫が地面に落ちる音だろう、中身が潰れるような音がした。
黒猫を投げつけたと同時に、歩道から脇道に入って様子を見ていた私は、目の前で見た光景の気持ち悪さと、過去の復讐を出来たような嬉しさが交じった微妙な感覚が全身を支配した。
その感覚は徐々に嬉しさが上回り、私は楽しそうに歪む口元を手で押さえて、その場から立ち去る。
「……不幸になったのは、アンタの方ね」
そんな言葉を黒猫に吐き捨てながら──。
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