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首だけを回して、「いい加減にお目覚めですか……っ」と苛々とした様子のそいつを睨む。
声は、ノイズ混じりの不気味な機械による合成音。
顔は、薄暗いせいかはっきりとは見えない。服は上から下まで真っ黒くなレザースーツ、細い身体をしていて、胸に少し膨らみがある? 女か? わからん。
「やっぱり起きているじゃないですか」
「…………」
「何か言ってくれたっていいでしょうに、人の悪い方ですね」
「…………」
「…………いい加減に何かを言ってみたらどうです」
いや、その前にこの猿轡を外してくれ。
俺を縛り上げたのはたぶんコイツだろうに、俺の口に猿轡を噛ませたことを忘れているのかそれともわざとだろうか、さっきまでよりも余計に苛立ったように無茶を言い続ける。
でもこんなものを噛まされている以上、俺は何かどころか文句も何も言えないわけで、
「…………」
「アナタは僕を馬鹿にしているんですかっ!」
キレた。
しかも僕って言った。僕って。もしかして女じゃなくて身体が細いだけの男だったのか。いや、そんなことはどうでもいいっ。
「い、いい加減に、僕を馬鹿にするような真似を、つ、続けるっていうのなら――殺すんだからっ」
ごりっ、と。何か堅くて黒いゴツゴツとした拳銃が頭に突き付けられて――
……おいコラ。待て。
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