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住んでいるアパートの前には、境井 海がいた。
「やっと帰ってきた。」
ゆっくりと近づいてくる。
俺の前まで来ると、自分より背の高い男は覆い被さるように抱き締めてきた。
「心配、したんだからな。」
「ごめん」
言葉と一緒に涙が流れた。
―――初めて、心配してもらったのだ。
「何処に行ってたの?」
俺の部屋のベットに腰掛けながら、境井 海は言った。
「昔住んでた家」
――片言しか話さない自分の隣にいて、果たして彼は楽しいのだろうか?
会いたいと言ってもらえる程自分は、価値のあるモノなのだろうか?
境井 海と話すと、いつも疑問に思っていた。
「葵、俺…お前のことが好き。何よりも、大切。」
いきなりの境井 海の言葉。
「だから、ずっと隣にいてくれるかな……?」
無意識のうちに、頷いていた。
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