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煙草と発泡酒を買い終わり、若草荘まで帰ると門の支柱の上に胡桃さんが優雅に座っていた。
胡桃さんは今日は着物を着ていて背中には『精進』とプリントされている。
「風の字か、おかえり」
「あっ、ただいまです」
「煙草は買ってきてくれたか?」
「はい買ってきましたよ」
俺が胡桃さんに煙草を渡すと慣れた手つきで封を開け、一本を取り出し火をつけて吸い出した。
胡桃さんが煙草を吸うとそれだけで絵になる。
「煙草って美味しいですか?」
「ん?全然美味しくないよ」
胡桃さんは至極当たり前のように言ってのけた。
「ただ所在無いから吸ってるだけさ。特に意味などない」
「じゃあ吸わない方が身体に良いんじゃないですか?」
この問いには胡桃さんも困ったようで顔を一瞬しかめた
「あれだ。モチベーションの問題だ。これをしないと調子が出ないとかあるだろ?それだよ、それ」
「そんなものですかねぇ?」
「そんなものなんだよ」
そう言って胡桃さんは紫煙を吐き出す。
「それとだ、友に気をつけなよ?」
「?」
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