薔薇と、冠と

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瓶底眼鏡を掛けた長身の男もラチが飽かないと思ったようで、目顔で細身の女性の指示を仰ぐ。 呆然としていたわたしはそこで初めて気づいた。 女性がわたしを隠す様な格好ですぐ側に立っていたのだ。 だから軍は、まだわたしに気がついていないみたいだった。 何故この人はわたしを匿うような真似をしているのか。 わたしは何故こんなところにいるのか。 長身の視線を受けて女性は腰にぶら下げていた鞄から何かを漁っている。  
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