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ある時代の乱れた世に
英雄と呼ばれる男が一人いました
彼はどんな人に対しても親切で
どんな人でも助けました
助けられた人々は口々に彼を褒め称えます
ありがとう
助かった
あなたのお陰だ…
彼はいつどんな時にも勇敢で
どんな時でも微笑んでいました
助けられた人々は皆彼に奮い立たされます
ありがとう
助かった
あなたのお陰だ…
ある時一人の少年が英雄に言いました
―ねぇ
どうしてそんなに泣きそうな顔をしているの―――?
人々は少年を嘲いました
―何を言ってるんだ
彼はとても親切で勇敢で
そしていつでも笑ってるじゃないか
少年は言い返します
―でも僕らは英雄の何もしらない
名前さえ知らないじゃないか
でも表情は分かる
英雄はいつでも哀しそうに笑ってるんだ
人々は押し黙ってしまいました
英雄はゆっくりと少年に歩み寄りました
そして少年に膝を付いて抱きしめ涙を流しながら言います
―ありがとう
君は僕の英雄だ―――
人は皆
誰かの英雄なのです
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