第二章 正希 ~家事~

3/7
前へ
/470ページ
次へ
 弟であり、そして父さんの実子であるその彼と、俺はほとんどやり取りをしていない。  数週間前に父さんから手紙を受け取り、そこに書いてあった連絡先へとりあえず電話した。  そこで話は出来なかったが、留守電に入れておいたメールアドレス宛てに、その日のうちにメールが届いた。  『天満渉です。電話に出れず、すいませんでした。  電話を頂いたのは、たぶん父からそちらにも連絡がいったからだと思います。  今回のことはあまりに唐突な話だったので、まだいろいろ整理がつきません。  万が一、ご厄介になる時は、よろしくお願いします。』  「整理がつかない」と言いながらも、急な事態をとりあえず受け止めている。  父さんの実の息子だから当然かもしれない。    父さんがやる事はいつも突発的で、こちらにも迷惑がかかる事が多々ある。  渉くんは、生まれてからずっとそれに付き合わされてきたんだろう…余程荒れるか、逆に冷静さを保てるか、どちらかに偏ると思う。  いずれにしても、俺たちは父さんから渉くんを「任された」と思っている。  父さんからの手紙には、最後にこう綴られていたからだ。  『渉には、随分長い間寂しい思いをさせてきたと最近よく感じてる。  正希も紀砂も夕花も、どうか渉と兄姉として接してほしい。  無理なお願いかもしれないが、きっと4人は良い家族になれると信じてる。  いつか私が戻った時に、4つの笑顔に迎えてもらえることを祈ってる。  追伸    渉には詳しい事を一切伝えていない。必要とあらば、3人から直接話してほしい。あと、渉が怒ってたらとりあえず鎮めてください。』  まぁ、相変わらず一方的だ。  手紙というのは連絡手段であって、互いにやり取りがあるからこそ成立するとは思う。  しかし、父さんに返信してもほとんど届いた試しがない。  だから、これは連絡じゃなくて要求だ。
/470ページ

最初のコメントを投稿しよう!

249人が本棚に入れています
本棚に追加