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ふと、父の能天気な笑顔が浮かぶ。
父、天満勤(てんま つとむ)は、医者をしている。
元々大学病院に勤めていたが、今は世界中を飛び回り所構わず自主的に医療活動をしている…らしい。
常に一人で行動しており、一年に数回送られてくる手紙以外にその居場所を知る術はない。
また、見知らぬ国から父の便りが届いたとしても、それが俺の下に届いた時点でその場に留まっているとは限らない。
要は、常に行方不明なのだ。
その行方不明者から届いた文には、相変わらず色々なことが書かれていた。今度はどうやら、赤道直下の熱帯雨林にいるらしい。
少なくとも、今の俺には縁がない場所である。
丁寧な文字で現地の状況について切々と綴られているが、それもこの筆者の息子にはあまり関係のない話。…と、いうより、いつもの事だから適当に読み飛ばしている。
だが、問題はその後。
俺の「これから」に関わる事について記載があった。
それが今向かい始めた引越し先についてである。
『…大学合格おめでとう。
直接お祝いの言葉を伝えたかったけど、しばらくは戻れそうにない。
けど、この機会に伝えなければならないことがある。
お祝いの言葉と同じくらい重要なこと、
それは、渉の兄さんと姉さんたちについて。
これは順を追って、面と向かって説明しなければいけないことかもしれない。
だけど、父さんはまだ戻れそうにない。
言い訳だらけだけど、ちょっとだけ我慢して、この後に書かれていることをしっかり読んでほしい。』
ちょっとだけ我慢して、読み飛ばさず確認したその後に続く内容…
普段の父らしくない事細かな文章でまとめられていたが記されていたが、それを大まかに説明すると、つまりこうなる。
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