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この俺…天満渉(てんま わたる)には、まだ会ったことがない兄と姉がいるらしい。
けど、直接血の繋がりはない、皆養子だという。
長男の正希(まさき)、長女の紀砂(きさ)、そして次女の夕花(ゆか)。
その3人は一緒に暮らしていて、俺が通う予定の大学から近い街に住んでいるそうだ。
既に、その兄姉たちには話を通してあるので、一緒に暮らしてほしい…
というのが概要で、無論父の一方的な要望。
父からの手紙はいつも一方通行なので、大した驚きはなかった。もちろん色々悩んだけど。
こういった父の「発表」は今回だけではない。
唐突に帰る予定を言い渡してきたり、いつの間にか母と離婚していたり、知らぬ間に国際的な栄誉ある賞を受けていたり…
その他諸々を考えれば、今回のことも大した事はない。
たまに作る味噌汁が、少ししょっぱかった程度と大差ない。
だが、初対面の義理の兄姉たちの下へいきなり転がり込むのに対しては抵抗があった。
一緒に住む…というのは、その人たちの守ってきた領域を侵す、ということだ。
友達にはそれなりにしか気を遣わない俺でも、正直気が引ける。
そんな俺の心境を知ってか知らずか…手紙が届いた数日後、まだ見ぬ兄から俺宛てに電話があった。
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