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「そんなに見ないでください」
「なんで?」
"今日はメイク失敗したし、あなたの方が肌の肌理が細かくて全体的に整ってるからです"
…なんていえない
「…はぁ」
相手に聞こえるくらいのため息をついて、「起きたんならのいてもらっていいですか?」と続けた。
「起きたけど、まだ寝るから嫌。」
彼は当然のようにそれだけ言って、あたしの太ももへ顔を埋めた。またため息がこぼれる。
制服のままなあたしの生足には彼のサラサラな髪がくすぐったくて、小さく体をビクつかせる。
「んふふ」
…笑った?
含み笑いで見上げて「感じたの?」と冗談混じりに問いかけられる。
頬が熱くなるのがわかって顔を背けると、左右に小さく揺すった。
「そっか」と笑いながら呟くと彼は再び太ももに顔を埋めた。
と、そんなことがあって三十分、
起きるまで待つかー
…なんて思っていたあたしだけど、この状況限りなく恥ずかしい。
いつの間にかカップル増えてるし!!
公園と言っても時間的にも子供が遊ぶ時間でもないし、ましてや遊具がないタイプの公園。三台のベンチにカップルが座ってイチャイチャしてい…る?
って、ちょ、あたしもその中の一人なのでは!?
何のんきなこと考えてんだよあたし!
一気に現実に引き戻されて、「起きてくださいよ!お願いですからー」
と泣きそうになりながら彼に顔を近づけて、周りに聞こえないように起こしてみる。
眉間にしわを寄せて、「どうしたの…?」と優しく問いかけられた。
初対面とのギャップにドキドキしながらも「カップル増えてきたんで帰りません?」と控えめに聞いてみる。
「…あ、ほんとだ。
帰ろっか。送るし」
帰るという返事にホッとしながらも"送る"という言葉に違和感があって、「一人で帰れますから」と断りを入れる。
「何言ってんの?もう真っ暗だよ。それにここら辺最近、痴漢出たらしいし」
「…でも…」
「"でも"?」
「今日会ったばかりの人にそこまでしてもらうのは…」
「ハッハッハ」お腹を抱えて笑い続ける彼。
…なにがおもしろいのか全くわからない。
なんか周りに注目されてるし…
「いいから帰ろっか」
いきなり立ち上がった彼に腕を引かれた。
「ちょ、待ってよ」
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