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夜。
ただの夜ではなく、人々が眠りに就く直前。
町の一角にある空き地。
土管や鉄筋などが積まれて、資材置き場になっている。
満月より少し欠けた月が昇り、その空き地を冷たく照らしていた。
月が照らす空き地。
そこに、人が倒れていた。一人ではない、五、六だ。倒れている若い人間達の髪の色がかなり派手で、闇でもはっきり浮かび上がっている。金や明る過ぎる茶。服装も町中を歩いたら目立つようなものだ。
俗に言う、不良という奴らだろう。
その不良達は皆青白い血の気を失った顔で倒れている。
その、中に。
ただ一人、立っていた。
だが、不良ではないようだ。
長身で、丈の長い、高い襟のついた藍色の布を羽織っている。
体は見えないが、見える頭はとても目立った。
波打つ金髪。月光を弾く綺麗な金糸のような。
不良の中の金髪とは雲泥の差。
「……不味い、ですね。」
冷たくなり始めた空気の中を、少し高めのよく通る声が静かに響いた。
男、のようだ。若い。
「……ここに、『血』はありますかね…。」
若い男は、諦めたような口調で月を見上げた。
月を見上げる瞳は、血の如く紅かった。
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