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――――――――……
「……にしても、冬休み終わって早々吸血鬼話になるとはねぇ…。」
「平穏な日々は長くは続かないということを証明しているんだな。」
まだ日が短いこの時期。
瑞希と草馬が部活をしないで帰っても二人の影は長く伸びていた。
それにかなり寒い。
分厚い生地で出来た学校の冬用の制服でやっと寒さ凌げる感じだ。
全身制服に包まれている草馬はいいが、膝ぐらいの長さのスカートを着用する瑞希は足がすーすーして居心地が悪い。
だからスカートなどというものは嫌いなのだ。
意識してなくとも瑞希の表情は不機嫌だ。
女の子の心情などまったくわからない草馬は話を続ける。
「安倍どう思う?妖怪の仕業だと思うか?」
「………さぁな、人間技とは思えないから、その可能性は高いと思うが。」
瑞希は空を見上げる。
全体が橙色で、後ろを見ると深い藍色だ。
……そう言えば。
ふっと瑞希は目を細める。草馬と出会ったのは時期が違うにしても、こんな空の色だった気がする。
あの日会ってから、まだ数ヶ月しか経ってないのに、長く感じる。色々なことがあり過ぎたからこう思うのだろうか。
それにしても、いくら数ヶ月経ったからって馴染み過ぎじゃないか?自分。
まぁ、いきなり元に戻ってもなんだか物足りないような。
「……おい安倍?おーい。もしもーし。」
草馬に目の前は手を振られて感慨に耽っていた瑞希ははっと我に帰る。
「あ…?あぁ、なんでもない。」
「ならいいけど。」
いつの間にか止まっていた二人の足は動きだす。
「話を戻すと、吸血鬼事件は妖怪が絡んでいる可能性が高いと。」
「……血を吸うんだったら、蛭(ひる)か蝙(こうもり)の類(たぐい)の妖怪か?」
「じゃあ加藤が言ってた不良が見た外国人ってのは?金髪で紅い瞳の。」
「妖怪は長年生きて妖力が上がり、もしくは人の血で妖力を上げると、人型に変化できることがある。太一がいい例だ。」
「じゃあ不良が見た外国人も妖怪が変化したものってこと?」
「断言はできないがこれも可能性がある。」
「可能性ばっか。」
「まずは可能性から始めていくもんだ。
…それより、忠宗から知らせはないのか?四件も起こっているだろう?その吸血鬼事件。」
「今んところは連絡なし。でもきっとくると思うよ。」
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