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「あらソックス、久しぶりだねぇ」とニコニコしながら彼女はその猫を撫でている
「なに知り合い?」
「公彦は知らないかも知れないけど、公彦が寝ちゃってる時と公彦がバイトの時によく来てた猫なの」
「なんだそれ」
そのソックスと言われた猫は
俺が近づくとフイッと避けて
彼女の足をくるとしっぽで巻いて睨むように俺を見た
「この子、飼い猫かしら…」
見た所首輪はしてないし
ベランダから伸びている足跡は
野良猫たる生活をしているからこそのように思える
近くの大通りにトラックが走るとこのアパートは揺れる
すごい音もする
なんでこんなとこで
二人暮らしをはじめたんだろうかと改めて思う
「…飼いたいな」
ぼんやり猫を撫でながら
囁いた
はっきりと聞き取れなかったが
彼女は俺に言っている感じではなかった
少し切ないトーンで
しかしただの独り言ではなく
誰かにすがるように
言っていた
それは「逢いたいな」と言っているようにも聴こえた
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