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「まったく、朝からなにモメてんだよ?」
と、ボクたちの会話に入ってきたのは……
「アツシくん、おはよう」
「ああ。おはよう。ちせちゃん」
“アツシ”。ボクとは、アケミと同じく幼なじみという関係でクラスメイトでもある。こいつとは、よく遊んだりもしている。
「アツシ聞いてよ。シュウジってば、またちせを泣かせてたのよ」
「だから、泣かせてねえって!!」
「……シュウジ」
「な、なんだよ?」
「ちせちゃんを泣かすと……」
「……泣かすと?」
(アケミにどやされっぞ!)
アツシはボクの耳元で、小さな声で言った。
「……ぷっ!」
ボクは思わず吹き出してしまった。そして、アツシと共に笑った。
「アツシ?」
「ははは……はは……!?」
「…聞こえてるんだけど」
ーー僅かの間、静寂の時間が流れたーー
アケミの手が、小刻みに震えているのが見えた。そして、次の瞬間……ボクとアツシは……
「アツシ!!逃げるぞ!!」
「お、おうっ!!」
見事なスタートダッシュを切り走り出した。
「コラーーッ!!」
アケミの怒鳴り声が背後から聞こえたが、ボクたちは振り返らず走り続けた。風が肌をかすめ、額から流れる汗がとても気持ち良かった。こんなに清々しい気分になったのはいつぶりだろう?もう、決してやってくることはないと思っていた…こんなあたり前で、ごく日常的でありふれた……
『平和な日々が…』
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