†序章†

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ここは、標高の高い山の頂上。 山といっても、木や草などの植物など生えていない、岩だけの山だ。 斜面は崖のようにほぼ垂直、普通に登ることなどできないだろう。 唯一頂上に登れるとすればそれは、鳥か… 羽根のある者だけだろう。 「はぁ…はぁ… ここまでくれば、もう大丈夫だろ」 その羽根のある者は、頂上に立ち息をきらせて羽根を休めている。 この山の標高は高い。 高すぎて麓(ふもと)が雲に隠れて確認できない。 というより、この山には麓などない。 何故なら、ここは天界。 天界には、地面など存在しない… 故に、雲が大地であり、海なのだ。 この山は、天界に浮かぶ、境界を示す目印である。 「へへっ、この山の下へ行けば、俺は自由になれるんだっ」 羽根をもつ男は、頂上から雲に隠れた山の麓を見た。 「神に従う人生なんて、もう嫌だ… 下界に降りて、人間のように自由に暮らすんだ」 そう、彼は神に仕える者。 …『天使』なのだ。
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