ある日の私と大貫と。

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大貫が死にたいと言い出した。     それは大貫と知り合ってから度々あったことで。 特に変わったコトじゃなかった。  だから朝は軽く聞き流したんだけど、三時間目が終わったくらいから、大貫の様子がおかしい。   斜め後ろの席から、私はいつものように大貫を観察していた。 今日の大貫は肩下まである天パ気味の若干茶色がかった髪を、一本に束ねていた。   だから、斜め後ろからも表情が少しわかる。 先生の話を聞いているのかいないのか…  時折、耳朶を右手の中指ではじく。 心ここにあらずの時、大貫は、よくこういう仕草をする。 ただ、いつもと違うと感じたのは… 大貫が好きな「家庭科」の授業中なのに、この態度だと言うことだ。   彼女が好きな授業に、心あらずなんてこと、滅多にない。  唯一の得意教科だと本人が言っていたから。   それに…  また、ため息。 深く、長く…これは…なんかおかしい。 とりあえずこの授業終了後、声かけた方が良さそうだ。 そう思って、私は窓の外を見た。   嫌な空だ…雨が降りそうな、どんよりとした薄暗い曇り空。 雨そのものは嫌いじゃないけど、今は出来たら晴れていて欲しかった。 なんでなのかわからないけど、私の気分も鬱気味だった。       初めて大貫と会った時。 大貫は、私の顔を見て逃げた。  正直言って、第一印象最悪だった。   いきなり顔見て逃げんじゃねぇよ…ってそう思っても、追いかけた私も私だけどね。  後で聞いたら、ガンつけられたかと思った、らしい。 失礼な奴だ。普通は逃げないぞ、と言った私に、奴はこう言った。   『だって私、普通じゃないから』
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