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「君の名前はなんだい?」
オレはオレだ。
「名前が無いと呼び辛いなぁ…白いから白ちゃんとか」
だからオレだって…
不満そうなのが分かったのか男は
「ミィちゃん」
と、呟いた。
ふざけるな。オレは雄だ。
「なんだい、まだ不満そうだね…そうだなぁ~………あぁ、コタロウ!コタロウにしよう!」
男は嬉々とコタロウコタロウと連呼している。
嫌だという気持ちを込めて唸ったのに、男はグィッとオレに顔を近づけて笑い、
「気に入ったんだね!コタロウ!」
と言ったから、思いきりパンチしてやった。
どうやら、この男はタロウと言うらしい。
一人暮らしらしくこの家で他の人間を見たことが無い。
タロウは1日のほとんどを家で過ごしている。腹が減ると外へ出て、ごはんを持って帰ってきた。
タロウはショウセツカという仕事をしているらしい。
大きな本を自慢気に見せられたけどオレには興味がなかったから無視してやった。
タロウは甲斐甲斐しくオレの世話をしては隙あらば顎とか鼻筋とか触ってくる。
触るな!とパンチを繰り出す。最近は爪まで立ててやるけど、タロウは楽しそうだから腹が立つ。
足が治ったら飛びかかって引っ掻いてやる。
「コタロウはぜんぜんなつかないねぇ。そんなに僕が嫌いかい?」
嫌いだ。触るなっていうのに触るし。
「コタロウちゃ~ん」
ナデナデと顎の下を撫でられたから手を掴んでグッと爪を立てた。
「いたたた!もぉ~、だから僕は猫より犬派なんだよね」
なんてやつだ。あんな野蛮な犬のがいいなんて!
やっぱりお前は嫌いだ。
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