同じ

2/3
前へ
/18ページ
次へ
秋になって、後ろ足が使えるようになった。タロウは家からは出してくれないから家の中を歩き回る。 体が重たくなっていて、棚へ登ったものの滑り落ちてしまった。 「アハハハハ!!」 それを見ていたタロウが腹を抱えて笑うから、これ見よがしに棚で爪を磨いでやった。 笑っていたタロウは顔を青くして情けない声を出したから、気分はスッキリだ。 ダンボールにいた頃は気づかなかったけど、タロウは毎日木の箱の前に座って手を合わせていた。いつもの鬱陶しい明るさは無く、その時だけタロウは大人しい。 何をしているのかと思って近づいたらアレはタロウのオヤだと言った。 アレっていうのは木の箱に置いてある人間の写真だ。 オヤが何か分からなかったけど、どうやらオヤは車の事故で死んでしまったらしい。 タロウの様子からオヤが茶色いのや黒いのに似た存在なんだと分かった。 ある日、タロウは箱の前で泣いていた。 今日はメイニチというらしい。 いつもと同じ事をしているのにタロウの様子を見ていたらとても寂しい気持ちになって、茶色いのや黒いのがいなくなった時を思い出してしまった。 ホント、なんてことしてくれるんだコイツは…。 今日はオレも寂しくなってしまったから、いつもより長く手を合わせているタロウの横に座って、黒いのと茶色いのと遊んだ日々を思い出していた。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加