4人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
彼女が、泣いていた。
この世界に来た時も、仲間が裏切った時も、殺し合うしかない時も、仲間が死んだ時も、決して泣かなかった彼女が。
声を圧し殺して、泣いていた。
いつだって強気で、強情で、優しく差し伸べた手を払い退けられた事もあったというのに(その後ケンカになったっけ)、今、彼女は泣いていた。
「君が泣くなんてね」
「‼な、泣いてない‼」
「……泣いてよ。僕たちのために」
乱暴に涙を拭う手を掴むと、彼女は振り払ったりはせず、声をあげて泣いた。
「っふぇ……うわぁ~~~ん──」
もしかして彼女は泣き方がわからないのかもしれないと思った。僕が慰め方を知らないように。
ただ僕は突っ立って、彼女の手を握っている事しかできなかった。
最初のコメントを投稿しよう!