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私は、泣いた。
いつだって、私は勇者だから泣いてはいけないと自分に言い聞かせてガンバってきたけど、今は、ムリだ。
声を圧し殺して、ただ泣いた。
この世界に来た時も、仲間に裏切られた時も、殺し合うしかなくて、仲間を倒した時も、彼が慰めてくれたけど…。
「君が泣くなんてね」
彼が現れた。
彼には泣き顔なんて見られたくないのに。
「‼な、泣いてない‼」
彼はため息を吐いて言った。
「泣いてよ。僕たちのために」
涙を拭っていた手を掴まれて、もう、こらえられない……。
「っふぇ……うわぁ~~~ん──」
こんなに泣いたのは初めてだった。こんなに悲しいのが初めてなように。
ただ私は彼の手にすがるように泣く事しかできなかった。
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