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「……泣き止んだ?」
「離さないで」
彼の手を捕まえて、握る。
…気がつくと彼も泣いていた。
「離さないで。ここに、いて」
お願い。
声が掠れてしまったけど、伝わったらしく手は繋がれたままだった。
私が倒した魔王は、何故この世界を破壊したかったのだろう。
知らなかったのだろうか。繋いだ手が暖かい事を、交わす言葉が暖かい事を、いつもいる存在が暖かい事を。
私にとっての暖かい手、暖かい言葉、いつもいる存在は……。
彼、以外思いつかない。
「みんなの所に戻らない気?」
無言が返事。
彼はいつも、それだけで察してくれた。
いつも……。
「泣き虫勇者なんてみんなには見せられないからね」
いつもこうして私をからかうのだ。
「うるさぃ」
全力で振るった腕は容易く受け止められてしまう。
思えば、彼には何一つ勝てなかった気がする。腕力とか、冷静さとか、賢さとか。
今も彼が取り乱さずにいるから「帰りたくない」なんて言わずにすんでる。そんなわがままで困らせたくないから。
私は、そのいつも正しい所がずっと……──────……頼りに、なっていたんだ。
ずっと。
…ずぅっと。
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