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「そっか、涼から聞いたんだ。」
「…はい」
泣いてしまった以上、何故泣いてしまったか、言わなければいけなくなってしまい、さっき涼さんに聞いたことを全て話した。
「んな気にすることないからさ。俺だってこのままずっと女装してモデルなんてするつもりないし。……成長は止められない。」
横に座ってる樹さんは、自分の今の状況の深刻さに気づいていないのか他人事かのように話している。
あるいは無理をして平気を装っているのかもしれない。
「……何で、女装してモデルになったんですか?」
私がずっと気になっていたこと。
「――…何で、か。」
樹さんの仕事への思いが強いと知っていたから聞かなかった。
でも、やっぱり女装してまでやるモデルに意味があるのか。
樹さんなら少し体が細くてもしっかりした男性のモデルとしてやっていけそうなのに。
そんな疑問を聞くのは今しかない。
それから少しの間、樹さんとの間に沈黙が流れた。
すると、樹さんが口を開いた。
「なぁ、春菜?」
「何ですか?」
「…何で、俺のモデルの名前がREIだと思う?」
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