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今日は珍しく俺が玲の家に訪れた。
モデルをやるにあたって所属する事務所に初めて顔を出し、契約とかなんだかよく分からないことをするらしい。
だから、その見送りをしにきたんだ。
久しぶりに入った玲の部屋は相変わらず綺麗に整頓されていた。
女の子らしい小物やぬいぐるみ。
昔から可愛いものが大好きなことに変わりはなかった。
そして部屋中に玲の良い匂いがするから、ちょっとテンションが上がったのは内緒な話。
「玲、準備大丈夫か?」
「うん!」
「ちゃんとタオル持ったか?」
「うん!」
「ティッシュは?書類は?」
「っもう、大丈夫だから!心配しないで、樹お父さんみたい」
「おっ、おと…!?」
こいつは俺がこんなに心配してやってんのにお父さんみたいとかふざけたこと言いやがって…。
だいたい今日起こしてやったのは俺だろうが。
俺が起こさなかったら確実にお前予定の時間に遅刻だっ……「樹!」
ふと玲を見ると俺に向かって深々とお辞儀をしていた。
「いつも本当にありがとう!ここまでこれたのも樹の応援してくれたおかげだよ。行ってきます!」
思わずみとれてしまった。
眩しかったんだ、玲が。
最高な未来を見据えているように輝いていて強くて曲がらないまっすぐな目をして笑っていたから。
しかし、その笑顔は何故だか少し儚く感じて
もしかしたら何度俺が手を伸ばしても届かないのではないか、そんな気がしてしまった。
「…………あ」
頑張ってこい、って一言。
言ってやろうと思ってたのに。
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