一章

4/13
前へ
/13ページ
次へ
「おはよう…ってあらあら、凄い寝癖ね」 この妙に艷っぽい声で俺に朝の挨拶をしてきたのは他でもない、俺の母親だ。 母親の声に対し「艷っぽい」とか使うのは正直俺もどうかと思うが、まあ聞き流してくれ。 俺は頭をくしゃくしゃとかきながら椅子に座る。隣の席に妹がちょこんと座る。 「親父は?」 「お父さんは仕事。まったく、休日なのに大変ねー」 「ふーん」 カタン、と机の上に目玉焼きが人数分、3つ置かれる。その他にもサラダ、コンソメスープ、スライスされたフランスパンにマーガリン。 典型的な洋食である。 「いただきまーす!」 妹の元気すぎる掛け声が部屋に響く。元気なのはいいことだが、朝食くらいはもう少し普通のテンションで食べなさい。 「ふぁーい」 口の中でパンをもぐもぐさせながら妹が返事をする。 母親はサラダを少量小皿に取ったあと俺に尋ねる。 「今日学校は?」 「母上様?本日は日曜日ですことよ?」 「あら、そう」 さっき自分で「休日」って言わなかったか? 何にも変わりない(母親の天然ボケ含む)いつも通りの風景だ。 皆が朝食を食べ終わった後、俺がティッシュで妹の口まわりを吹いてやる。 「こら。動くんじゃない」 「んー」 後片付けも終わり、また妹の「ごちそうさまー!」という声が部屋中に響いた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加