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猫は暫く見つめていたが、唐突に身を翻し走り出した。
「えっ、おいっ…!」
別に追い掛ける必要はない。
だが、この猫に何かあると確信した。
猫を追い掛ければ、確信が確かなものになるかもしれない。
圭吾はそう考えると、猫を追い掛けて公園を飛び出した。
それから暫く猫を追い掛けた。
息が切れ始めてきたが、不思議と走るスピードは落ちない。
互いに一定の距離を保ちながら走っていた。
追い掛ける途中、色々な場所を通った。
見慣れた家、見慣れた通学路、見慣れた学校…―
走り続けて、圭吾はあんなに狭い場所に自分は閉じこもっていたのかと思った。
外は自分の居場所など無いと言えるほど広い。
もしも無いのなら、作ればいい。
今の場所に固執している自分が滑稽に思えてきた。
暫く走っていると、猫はひょいっと路地裏へと入っていった。
猫が入るのを見ると、圭吾は一度立ち止まった。
この先へ行けば、きっと替われる。
閉ざし続けた心を、漸く開く事が出来る。
迷いは無い。
圭吾は確認するかのように自分に言い聞かせると、ゆっくりと路地裏へ足を踏み出した。
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