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街の外れにある小さな公園。
その公園のブランコに目深に帽子を被った少年が座っていた。
足元では一匹の黒猫が擦り寄っている。
少年――長谷卓がゆったりとした手つきで撫でると猫はするりと擦り抜けたが、また足元に擦り寄った。
「……お前、なんでこんな所にいるの…?」
「ニャア」
「…早く家に帰りな」
猫は鳴くこともせずじっと卓を見つめていた。
「…家が、わからないのか?」
猫がじっと見つめ続けていると、卓は表情を作る事もなく呟いた。
「……俺は、わからない」
「……皆、隠してる。俺も、隠してる事ある。……でも、俺は知ってる…」
卓が呟くと猫は暫く見つめていたが直ぐさまどこかへと去っていってしまった。
卓は猫が去っていってしまった方を見つめていたが、おもむろに立ち上がると公園を後にした。
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