2人が本棚に入れています
本棚に追加
卓はある建物の前まで来ていた。
そこは所謂孤児院という所で、卓は小さい時から此処に世話になっていた。
最近は少なくなってきたが、たまに子供を預けに小さい子供を連れた親子が尋ねて来るらしい。
卓は赤ん坊の時に此処に来た。
見た目は少年らしさがあるが、卓はもう来年には二十歳になる。
幼い頃には何回か養子として此処を出た事はあるが、結局は此処に戻って来た。
卓は気にしていなかったが、いつまでも居座っているのは少し心苦しかった。
中学を卒業して高校も無事に卒業出来た。
だが、流石に大学まで面倒をみてもらう気にはなれず、大学は諦めた。
大学を諦めたはいいがバイトも長続きせず、毎日年下の面倒をみるか公園で一人になっていた。
「卓君、帰ってたの?」
卓が暫く孤児院の門の前に立ち尽くしていると中から出てきた女性に話し掛けられた。
此処で子供達の世話をしている職員の一人だ。
「すぐるお兄ちゃん!」
女性の後ろから一人の少女が現れると、少女は卓に飛び付いた。
「お帰りお兄ちゃん!」
「かなちゃん、ずっと待ってたのよ」
卓は少女の頭を撫でてやると、すみません、と小さく呟いた。
「さ、中に入りましょ」
卓は小さく頷くと、少女と一緒に孤児院の中へ入っていった。
.
最初のコメントを投稿しよう!