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圭吾と猫の再会は、案外と早いものであった。
翌日の朝、昨日と同じように塀の上に猫は居た。
「まだ居るのか」
「ンナ゛ー」
まだ早い時間のせいか生徒どころか人すら疎らだ。
おかげで周りから怪しまれる様子はなかった。
「さっさと行かないと先生達に保健所に連れて行かれるぞ」
圭吾はそう言い残すと校門をくぐって校舎へと入っていった。
「ナ゛ー」
猫は圭吾が立ち去ると一声鳴いて塀から飛び降り、何処かへと歩いていった。
授業中、どうしても圭吾は猫が気になっていた。
たった二回会った程度だが、圭吾の心に引っ掛かったままだった。
(……心、か…)
親のいいなりになって教師の期待に応えるようなだけで、自分の心だと言えるのだろうか。
圭吾は、今の生活にどこか嫌気がさしていた。
特にやりたい事があるわけでもない。
だが、少しだけ親や教師の目から離れてみたかった。
―…あの猫が、どこかへ連れて行ってはくれないだろうか―
一瞬、そんな考えが浮かんだが、馬鹿馬鹿しいと首を振ると授業へと意識を戻した。
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