閉ざされた心

4/8
前へ
/15ページ
次へ
圭吾と猫の再会は、案外と早いものであった。 翌日の朝、昨日と同じように塀の上に猫は居た。 「まだ居るのか」 「ンナ゛ー」 まだ早い時間のせいか生徒どころか人すら疎らだ。 おかげで周りから怪しまれる様子はなかった。 「さっさと行かないと先生達に保健所に連れて行かれるぞ」 圭吾はそう言い残すと校門をくぐって校舎へと入っていった。 「ナ゛ー」 猫は圭吾が立ち去ると一声鳴いて塀から飛び降り、何処かへと歩いていった。 授業中、どうしても圭吾は猫が気になっていた。 たった二回会った程度だが、圭吾の心に引っ掛かったままだった。 (……心、か…) 親のいいなりになって教師の期待に応えるようなだけで、自分の心だと言えるのだろうか。 圭吾は、今の生活にどこか嫌気がさしていた。 特にやりたい事があるわけでもない。 だが、少しだけ親や教師の目から離れてみたかった。 ―…あの猫が、どこかへ連れて行ってはくれないだろうか― 一瞬、そんな考えが浮かんだが、馬鹿馬鹿しいと首を振ると授業へと意識を戻した。 .
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加