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それから暫く、圭吾は猫を見掛けことがなくなった。
毎日会っていただけ、急にいなくなると不安になる。
とりあえず、近所の人に聞いてみる事にした。
「あの、すみません」
「あら、圭吾君じゃないの。どうしたの?」
手短に、隣家の人に聞いてみることにした。
「猫、見ませんでしたか?真っ黒い猫なんですけど」
「さぁ…私は見なかったけどねぇ。名前はなんて言うの?」
「いえ、飼い猫じゃないんで」
初めて猫と会った時以来、誰かが居る時に猫と会った事がなかった。
だが、初めて会った時。
担任教師が来た時、猫は忽然と消えていた。
圭吾はそれが不思議でならなかった。
「そういえば圭吾君、もう三年生よね?受験大変でしょうに。あの大きな大学を受けるんでしょう?凄いわねぇ。でも圭吾君なら大丈夫よね、頑張ってね」
「………はい、有難う御座います」
よく喋る隣人に会釈をすると、圭吾は足早にその場を去った。
圭吾は猫を探すのも忘れ、ふらふらと街中を歩いていた。
頭の中では、同じ事の繰り返し。
このままか、否か。
(………このままで、いいと思ってた)
顔色を伺って、期待に応えて、自分の気持ちを閉ざして…。
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