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あの猫に会ってからだ。
心が揺らいだような気がした。
ひたすら、それに気付かないフリをして閉ざしたままでいた。
けれど、猫は圭吾の前に現れた。
(……けど、悪い気はしない)
親に背いて、今までとは違う道を歩もうとしている。
その考えに嫌悪感はなかった。
躊躇いはするも、その方がいいかも、という気持ちもあった。
「……なんだ、それ」
圭吾は嘲笑うかのように薄く口元に笑みを浮かべた。
(全部、あの猫なのか?)
圭吾は疲れた足を休ませる為に小さな公園へ入った。
ベンチなど無い公園では、座れる場所といえばブランコぐらいだった。
ギィ、と軋む音を立てながらブランコに座るといつの間にか目の前にあの猫が居た。
「お前のお陰、って言うべきか?」
「ニャンっ」
当然とでも言うように猫が短く鳴くと、圭吾は可笑しそうに小さく笑んだ。
「……ちゃんと決めなきゃな」
小さく呟く圭吾を、猫はじっと見つめていた。
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