8人が本棚に入れています
本棚に追加
途中僕達は、吉野家で昼食を挟んで再び車に乗り込んだ。出発してから二時間近く経過している。笹倉が出発したばかりと聞いて、こっちは少し気を抜いていた。
「なぁなぁなんか聞きたい曲あるか?」
石井が車にipodを繋ながら、後部座席を振り返った。僕と和久井はうーんっと唸るだけだった。
「やっぱりドライブやねんからテンション上がるやつかけてよ」
高井が前を向いたまま答える。その言葉に石井はニヤリと口角を上げる。何かたくらんでいるのが、すぐにわかった。
彼は慣れた手つきでipodを弄くり、曲を探している。車のスピーカーを通じて流れてきたイントロは場所が悪いのか、スピーカーの調子が悪いのか、雑なメロディーを奏でていた。
「なんやこれ?」
僕は思わず口にしていた。
「変なの書けんといてよ!ロックやね?爽やかな気分ならへんし」
高井が口を尖らせる。和久井も不快感を顔全面に出していた。
「自殺したくなるやろ?ニルバーナの曲やねんけど、コバーンの生涯がこの曲全面に押し出されてるみたいやわ。世間の評価と自分自身のギャップ。相当苦しんだはずやで」
流れてくる曲はニルバーナのものだった。僕はあまり詳しくないから曲名までは、わからないがボーカルの悲痛な叫びがスピーカーを通して伝わってくる。胸が痛くなった。
「もうどうでもええからはよ曲変えてよ。運転集中出来ひんやん」
高井の主張が通ったのか、石井はまたipodを弄り初めて、次の曲に移った。
最初のコメントを投稿しよう!