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次の曲はハイテンポないわゆるノリの良い曲だった。歌手名を聞いたら、今流行りのアイドルの曲だということがわかった。 「こうゆうのがええわ。瀬戸口明日香でもええねんけどな」 高井が高揚した様子で話す。ハンドルに手を乗せながらも、止まったときは曲のリズムに合わせて、指をトントン動かしている。 「瀬戸口明日香ってどんな曲歌うの?」 「う―ん……一言では言われへんけどなぁ、深いねん。なんか心の芯まで届くような少し儚い歌かな」 和久井はわかったのかどうかわからないが、ふぅんと頷いていた。 その後も、石井の独断によって選ばれた曲が車内のムードを作り上げていた。途中で笹倉から電話があり、彼も僕らと同じくらいの場所にいることがわかった。 後部座席から乗り出して、前方の上方にある青い看板を確認する。今は岸和田市のようだ。本当に目的地まで、もうすぐだった。 「もうすぐやな」 石井がワクワクした様子で高井の顔を見る。高井は長い運転からか疲れが顔に映し出されていた。 「ふぅ―。疲れたわ。帰りもかと思うと、もうエスティマ置いて、電車で帰りたいわ」 苦笑いを浮かべる高井。本音からの発言に思えた。 「電車は盛り上がらんって。帰りも頼んだで」 無責任だなぁっと思うが、石井の発言は僕の発言でもあった。実際運転出来ないので、気の毒ながら彼女に任せるしかないのだ。男としての不甲斐なさを感じた。
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