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エスティマに乗り込んだ車内は、運転席に金持ちだが傲慢な高井香奈、助手席にはお調子者石井守、石井の後ろに眼鏡のパッツン和久井秋、そしてその右側に僕(戸田友矢)の順である。 朝から出発して、現在正午過ぎ。絶好のビーチバレー日和に恵まれた晴天で、窓からは大阪の景色が移りゆく。窓から目を離して、ルームミラーをチラリと見る。相変わらず高井の顔は不機嫌だ。 「ってか西川腹壊すとか絶対ウソやわ。だって前の日彼女家来る言うてたから確信犯やな。しかも牡蠣やで!牡蠣。なまものの象徴やんけ、理由がありきたり過ぎんねん」 助手席では誰に話しているのかわからないがベラベラと饒舌な石井。それがより一層高井の眉にシワを寄せる。 「笹倉がチャリで西川の家に行く途中で、電話あって『今日腹壊したから無理』言われたらしいわ。初め西川が車出すことなっとったから、アイツ慌ててレンタカー借りてんぞ?おもろすぎやろ!」 「おもろすぎってか、災難やな。わざわざレンタカー借りんでもエスティマやったら乗れんのに。言ったったら良かってん」 僕はルームミラーの高井の顔を見ながら話す。険しい表情が、一番魅力的な顔をしている。 「ええねん、ええねん。おもろいやん。おもろかったらなんでもええねん。レンタカーも自腹とかホンマ西川やりよるわぁ」 「もう!キィキィキィキィうるさいいねん!お前は猿か」 石井がバカ笑いをして、高井の怒りが爆発したようだ。彼女は見かけによらず、粗雑な荒い気性である。
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