4/12

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「なんやねん猿ちゃうわ」 「そんなんわかっとるわ。うるさい言うとんねん。ってかなんで私が運転しとんのよ……あんたが運転しぃや」 「エスティマに傷つけてええんやったら代わったるよ?運転したい気持ちは山々やねんけどなぁ」 「もうええわ。親に許可なしで来たからな。傷つけたらマジヤバいわ」 「許可ぐらい取って来いよ。親父っさん困りはるで」 石井がそう言うと、高井は黙った。何かいけないことを口にしたかと石井が訝しがるが、表情から何も窺えない。ミラー越しになんとも言えない彼女の顔が映る。 「戸田は免許ないんやろ?」 僕が黙った高井をミラー越しに見ていると、それに気付いてか高井が問い掛けた。 「今年の冬取ろうと思てんねん。内定は決まったし、そんなに車使わないやろうしな」 「ふぅん……」 興味なさげに返す高井。場の空気を保たすために繋げた会話に過ぎなかったようだ。 「秋ちゃんは?」 高井が尋ねるが和久井は応答がない。後ろを向けない高井に代わって、石井が後部座席に目を向ける。僕は彼女がどうしてるか前から気付いてたけど……。 「お前車で新聞読むなや!せめて携帯で確認しろよ。酔うで?俺が酔いそうやわ」 顔をしかめて、石井は座席に落ち着いた。和久井は新聞から目を離して、まじまじと眼鏡越しから石井の様子を窺う。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加