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テレビに夢中な高井そっちのけで、石井によるアメリカ自慢話が始まっていた。今や瀬戸口明日香に僕と石井、和久井は興味を失っている。
「やっぱ一番驚いたんは、あれやな、イングリシュネーム言うやつや。台湾人がちらほらおったけど、みんなイングリシュネーム持ってんねん。ありゃ自分で作るらしいで?中でもアイツには驚いたわ」
「アイツ?」
和久井が興味を示して聞き返した。僕は何千回と聞いた話なので、聞いているふりをしていた。
「なんやと思う?名前がティファニーやで?正しくはティフェニーらしいけどな。お前はブランドか!って言いたくなるわ」
ガハハハと一人笑いする石井。和久井はクスリともせずに新聞に意識を戻した。僕もボッーと窓から外の景色を眺める。
失踪か……。今どこにいるんだろうか?でも瀬戸口明日香がもし目の前に現れても気づかない自信がある。それだけ彼女の顔の特徴は、あの赤いハットに圧されている。
依然とニュースキャスターは延々と瀬戸口明日香に関する情報を求めると同時に、こちらにも情報を提供している。
あまりテレビに出ないことから謎に包まれた部分があり、捜索は難航しているように思えた。身内に関しても、マネージャーですら知らないようだ。
そして、ハンドルにだらしなく腕を乗っけて、何か物思いに耽る高井。金持ちの令嬢として育った彼女だが、どこかに不満を感じている様子が窺える。
彼女の秘密も興味深そうに思えた。
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