青春を棄てさせた『一枚の紙』

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私の仕事場は造船所だ。 父親が海軍に所属していたために{軍艦}に魅せられたのだ。   もっとも、軍艦なぞは造っていないのだが…     私たちは輸送船を造っている。 物資を輸送したり兵隊を輸送したりする船だ。     仕事場には『田中さん』『村上さん』『斎藤さん』『新島さん』の姿はなかった。   理由は簡単だ。     『赤紙』が来たのさ。   私は一度、召集されている。 満州(中国)の国境警備のために 関東軍にお世話になった。   しかし、その時は赤紙ではなく、普通の正式な文書だった。 赤紙も正式な文書だが、あれは 普通ではない。   なんとも言えない 独特の感情が沸き上がり 口では言えない威圧感があるのだ。   異常な正式文書だ。
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