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いつものように仕事から帰り
母親と晩飯の用意をしていた。
兄は海軍の下士官となり
厚木基地で通信兵をしていて
弟は医者のために
陸軍の衛生兵として南方戦線に
参加している。
父親は5年前に結核で他界した。
家には母親と妹と私だけだった。
ドンドンドン
「藤波さん!いらっしゃいますか?」
「俺が出るよ。」
赤紙だろうと思った。
玄関の戸をあけると、肩に婦人会のたすきを掛けた女性4人と
郵便配達人が一人たっていた。
「藤波寛貴君!!万歳!万歳!」
「おめでとう!立派な兵隊さんになってくださいね!!」
「武運長久をお祈りいたします」
などと婦人会の人たちが私に言った。
その声を聴き、母親が駆け付けた。
「来ましたか…」
母は落ち込んでいた。
「ありがとうございます。立派な軍人となり、しっかりと務めを果たして参ります。」
そう言って戸を閉めた。
台所から妹の泣き声が聞こえたから、台所には行かなかった。
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