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愛美さんが、緩やかな表情を見せて、やんわりと話し出す。
「私、もう二度とサヤちゃんに会わないと、決めていたの。だから、最後の時間と思って、あの後に話しが出来て嬉しかった」
俺が見て、感じていた愛美さんの感情は、思っていたのとは違っていた。そんな、薄っぺらい思いじゃなかったんだ。
本気で、純粋に、ただただサヤちゃんが好きだったんだ。そして、断られた時点で全て諦めていたんだ。
土井の言葉は、彼女を変えたのか。
それとも、諦めをより強めさせたのか。
「私、サヤちゃんと友達しながら、サヤちゃんの気持ちが変わるの、待ってみようと思う」
「どうして……」
「土井さんが、思い出させてくれたから。サヤちゃんを、本当に好きだって気持ち」
まさか、話しが始めに戻ったりしないだろうが、友達しながらって辺りに引っ掛かりを感じる。
どうする気なんだろう。
「でも、別に迫ったり変な事はしない。ただ、サヤちゃんが、私を好きになってくれるの、待ってみるだけ」
「それで」
「それだけ」
もう、大丈夫だ。彼女は無茶な事はしないだろう。
秘めたる恋。それを選んだんだな。
顔立ちも、何だかすっきりしたように見える。これは、読み違ってはいないと思う。
「それに、私は土井さんより、一歩リードしてるって思ったから、頑張れそうだし」
「リードって」
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