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土井の言葉にやはり気分を害したのか、目の周囲に力が入って表情が曇る。
ただ、怒りに任せて自分の年齢を言ってしまうほど、彼女は冷静さを欠いてもいなかった。
「未成年だったら、お店には入っちゃいけないんですか?」
その言葉が、未成年であることを認めているのは自覚しているようだった。
「入店の拒否はしないよ。ただ、アルコールの提供の問題で確認したいだけなんだ」
「17歳です……」
見た目と5歳は違う。普通でいけば、成人女性としてアルコールの提供を受ける事が出来そうだった。
ただ何故一人で、ショットバーに来たのかは分からない。
「何を飲みますか?」
「あっ、でも、お酒を出してもらえないなら、注文できない。カクテルを飲みたかったのに……」
「カクテルだったらいいんだね?」
「えっ、カクテルはお酒じゃ……」
彼女もカクテルについて、誤解している一人だった。
一般的にカクテルというと、シェーカーを用いてリキュールなどを数種混合し、色合いの綺麗なアルコールの飲み物と思われがちだ。
彼女に説明しながら、フルートタイプのシャンパングラスを取り出す。口が狭く、細長く背の高めのグラスだ。
アップルジュース、パインジュース等をグラスに注ぎ入れ、マドラーでステアしミントをあしらう。
「わぁ、綺麗」
コースターを彼女の前に置き直し、グラスを差し出す。
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