第一話 二章

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   話題は酒のシメに流れていった。  縁ちゃんは、あまりピンと来ないようで聞き役に徹している。  まずは、王道のラーメンの話しから。  最初は、5人組のナンバー2らしき中年のお客さんが語り出す。 「この間、見つけたんだけど駅の反対側に、軽トラでラーメンの屋台が来てるけど知ってるか?」 「いえ、南口はあまり行かないので」 「昔ながらの醤油ラーメンで、シメにぴったりだぜ」  出張族に、地元を教わるとは悲しいものがあった。 「醤油もいいけど、シメはやっぱりトンコツで、替え玉までガッツンと食って寝るのがいいだろ」  最初に失言した上司が、脂ギッシュな顔をしてコッテリな事を言い出した。 「うわっ、何だか太りそう」  縁ちゃんが、げんなり顔で言う。 「俺もトンコツは、厳しいっすね」 「何だよ、みんなして。マスターは、トンコツの方が行けるだろ?」 「そうですね、冬場はトンコツにすることもありますけど、今の時期は醤油ラーメンですね」  嘘をついた。俺の酒のシメに食うラーメンは醤油と決まっている。  ちなみに土井もトンコツ派で、上司のお客さんと意気投合しコッテリな話しを二人で展開させる。  
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