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注文したメニューが揃った時、その日の出来事を思い出す。
17歳の彼女の恋は薔薇色の時間から、一瞬にして暗黒に落ちていった。それが、俺達と話すことで立ち直り先へと進んでいけた。
だから、シメを楽しむ為にこの店に来た。酒のシメと言うよりも、彼女の恋の話しの締め括りを、一人で楽しんでいるのかもしれない。
「白川 縁ちゃんか」
17歳には見えない大人っぽい顔と、長い黒髪が印象的な女の子。話したり、ちょっとした仕草はやはり17歳の少女だった。
ただ、彼女にとって今日という日は、忘れられない一日になったのは間違いないだろう。
俺の店は夜の7時から朝の5時までの営業で、実際には大体夕方の5時過ぎから来て朝の6時までは店にいる。
ほぼ、年中無休でこの時間を二人で切り盛りするのは、かなりオーバーワークだった。
もう一人の土井は、28歳で35歳の俺からすると弟のような存在だ。
「風見さん、ビア樽来てないっすか?」
「昨日の朝方に発注のFAXしとけって、言ったけどしたんだろうな」
「あっ、忘れてたっす」
「てめぇ、すぐに電話しとけ。最悪はある分でやるしかないだろ」
相方がドジなので、俺の仕事が増える。
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