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ミャクも無いことだし諦めてくれたら、また来てくれそうな気がする。
「土井。頼むからお前が営業妨害は、しないでくれよな」
「してないですっよ」
最近は土井をからかいながらも、丸氷をアイスピックで削るのが日課だったりもする。
こんな気楽な感じなのも街中のショットバーならではで、有名店やホテルのバーではやはり敷居が高くなるだろう。
そんな所は俺に合わないから、自分で店を出したのだ。
土井のミスで発注もれした、生ビールの樽も届いて準備だけは完璧だった。
しかし、30分過ぎても常連さんはおろか、冷やかしのお客も来ない。
「今日は、2時間かもな」
「えぇ、風見さん。だったら、営業メールやっとくっすか?」
「お前はホストか。いいから練習しろ」
店内に流れるのは、土井の振るシェーカーの音だけだった。
寂しさがより、増していく。
こんな時はお客さんが入ってきても、気まずかったり常連じゃないと帰られてしまう事もある。
その時、一人の若い女の子が扉を開けてオズオズと入ってきた。
「あの、一人なんですけどいいですか?」
「いらっしゃいませ。もちろんですよ。こちらのカウンターの席にどうぞ」
こんな時、特に相手が若い女性の時の第一声は土井の方が1秒ほど早い。
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