九夜

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「月の兎は、皆人工受精卵で生まれていた。これは常識」 何故かミニスカにインテリメガネで女教師風のユニ。 「では、その受精卵を作る際の精子と卵子。それはどこから来るのか………まず卵子、これは私のだ。シュウに作られたと言っても、身体は人間と同じ機能が付いてる。それ即ち、子宮もあるし卵巣もある。子供だって産める」 教鞭を自分の下腹部に向けるユニ。 「では、肝心なのは精子。これはどこからやってきた、誰の精子なのか。これは、すこしややこしいけど、要するにシュウの精子って事です」 「ユニ、俺は………」 「うん。シュウ自身の精子には、生殖としての機能は無い。男女の交わりにより、愛する女性に神威を送り、女神、てゆーか天使、にする為の、シュウの一部。それこそがシュウ自身の精子なワケだ。子供は出来ない」 「では、何故シュウさんの物だと?」 挙手をして質問をする神流(メガネ)。 「シュウも私も、パッと見ヒト、哺乳類。でしょ?」 「はい」 「だったら、身体の構成情報だけなら、ヒトの精子に積み込める、と踏んだワケだ、私は」 「………それは、つまり………」 「シュウの情報をDNAに変換し、それをヒトの精子に似せたモノに乗せた物………つまり、人間風シュウ。って事だね」 「成る程………」 「だから、卵子提供者であるタツノハと、シュウ風の精子。その間に生まれたスクナは、ある意味タツノハとシュウの間の娘。ってワケか」 「癒治ご名答~♪」 「一応、理屈は通ってるな………かなり特殊だけど」 「つまり、ハーフ以外の月の兎は皆私とシュウの子。なのだー」 「わーい、実感沸かねー」 「てなワケで、それはつまり、俺達がスクナの親、って事らしい」 病室。 どうしても、スクナの母親………タツノハと、二人で話したかった。 タツノハは、その左腕を失って、身体に包帯を巻いていた。 スクナは、どこまでも母親似らしい。 ただ、母であるタツノハの方が、デカい(色々と)。 てゆーか、若い。 「………そうか………」 「………すまなかった」 「いや、男一掃してくれたのは結構助かったよ」 (それでいいのか………?) 女尊男卑らしいからなぁ、竜。 「それにしても………私に娘が居たなんてな。それも、神様との間に」 「いやぁ、母親似に育ってくれて良かった」 「謙遜するなよ、神様」 「いや、俺に似たら性格歪むし」 「………」 マジで。
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