十三夜

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菫奈を追いやり、部屋の中へ。 「………見せられねぇよなぁ………」 そこにあったのは。大きな大きな、卵であった。 ベッドの上、1m程の位置に浮くソレは。内部からではなく、ソレそのものが白く発光していた。 それだけならばどこにでもある美術品だ。 だが、その、白く、無垢な卵は、その見た目とは裏腹に、人に恐怖を与える物であった。 「………ユニ、変化は?」 「無し。私もこんなのだったの?こんなのずっと見てたら気が狂うよ………」 「………まぁ………俺と生きる為、という理由があっても。自ら自分の身体を捨てる事………自殺っていうのは、罪以外の何でもない。だからこそ、狂う程に恐ろしくなければならない………そうすれば、自分の命を大事にしたくなる」 「………そっ………かぁ………」 感じる恐怖。 その理由は、表面から無限に滲み出る液体であった。 「また、ベッドが血まみれに………」 卵を支える柱のように、卵の下部から生える、赤い棒。 棒のように見えるが、実際は、静かに、大量に流れる液体が棒状に見えているだけだった。 その液体は、もはや言うまでも無いが。血液。 そして、この卵の正体こそが、他でもない、励那。 「励那が起きたら、部屋の掃除もしなきゃいけないかな………」 「あぁ、それは大丈夫」 「?」 「今は、身体を神威に変換してるだけ。このままだと、励那は、ただの神威の塊だ」 「………でも、この中に励那がいるんでしょ………?」 「いねぇよ?」 「うえぇ?」 「神威を空気、人間の励那の肉体を風船と例える」 「?」 「まず、ゼロの状態から、神威………空気を入れる」 「………ふむ」 「で、今の励那は、空気を入れすぎて爆発した状態」 「なッ………!?」 「んで、この後どうなるかというと………爆発した風船が、時間を遡り元に戻る」 「………?」 「で、その際、最後まで戻すんじゃなくて、途中で止める。そうすると、元の、空気の入ってないフニャフニャの風船ではなく。空気の入った風船になるワケだ。わかるか?」 「………な、なんとなくわかる………」 「実際は、巻き戻しの過程に、ゴム風船が別の存在に変わるワケだが………まぁ、簡単に言うとそんな所だ」 「ふーん………」 「で、俺達に出来るのは待つだけ。待って、励那が起きた………生まれ変わった時に、優しく抱き締めてやるだけ………」 「………あー、私の時もそんなだったね………」
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