十三夜

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「………」 ただただ見る。 「………何か、出来る事は無いの?」 「ねぇよ」 「………むー………」 「………まぁ、一日二日で産まれるからさ。それくらい待ってやろうや。………今更、それくらいワケないだろう?」 「………それでも、さぁ………」 「ないもんはないの。仕方ないんだ」 「………私の時は、さ………」 「?」 「ホントに辛くて、痛くて、苦しくて………何度も何度も諦めかけて、どうしてシュウは助けてくれないの?私の事嫌いになっちゃったの?って、何度も何度も思ったもん」 「………って、言われてもなぁ………今の励那は、『励那』以外の情報は拒絶するから、もし手出ししようものなら………」 す、と手を伸ばし、卵に触れる。 音も無く、肘まで光の中に埋まり。 その中から腕を出す、と。 「な………!?」 肘から先は、無くなっていた。 「な?こーゆー事だ………うわ、結構血ぃ出るな………」 無くなった腕の部分に神威の光を灯す。 その光が弾けて消えたら、腕は元通りになっていた。 「………俺ですらこの有り様だ。助けろと言われても、俺に出来るのは、つきっきりで卵を見張り、下手に触って被害にあうヤツを無くすだけ」 菫奈を部屋に入れなかったのも、そういう理由があっての事。 「言ってみれば、ヒナとミウのいる………ミヅキの向かう先の、あの白い盾の中と同じだ。この中は異世界。いや、世界と呼べるかどうかすら………」 芋虫のサナギの中身は、まぁ………なんていうか、アレだ。 今のこの卵の中は、神威があんな感じになっている。 励那ではなく、あくまでも神威。 で、その神威は俺から出ている。 つまり 粘土=卵=神威=俺 で、その粘土を励那の形にする際に、設計図としての役割を果たすのが、兎としての励那の肉体。 「神威が関わる時点で、その物は他の世界との関わりを持つ、世界を超える力を持つ………そんな力が、全力で自己防衛して、かつ、新しい形に生まれ変わろうとしている………すさまじい力だ。俺だって、そこまでの力は滅多に出さない」 (………出せるんだ………) まぁ、神様ですし。 「生物ってのは、産まれる時が一番生命の活動が激しい。………だから、言い様によっちゃあ神の子でもある天使が産まれる時の、その命は………そりゃあもう、とんでもないんだよ」 「………私の時も?」 「当然」 「………ほぇー………」
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