十三夜

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「神威が消えたら世界は消滅する。が、世界が消えても神威は無くならない………そんな感じだから、多分、そんな錯覚をするんだと思う………」 宇宙を膨らんだ風船とするならば、神威はゴム風船兼中の空気。 ゴム風船単体でも、中身の空気単体でも無いあたりが、神威の万能、有能、チートっぷりを表している。 「「へー………」」 「だからこそ、励那が卵だった状態を、世界とも風船とも例えたんだ」 「あ………そうだったの?」 「そうだったの」 「「へー………」」 「………ふぅ………読書も終わったし………次の暇つぶしは………と」 「はい議長」 「はいなんですかユニさん」 なんだコイツら。 「………シュウがイヤじゃなければ、なんだけど………」 「?」 「………思い出話、聞きたい………かも」 「? 思い出話?」 「うん………ミウとヒナの話………シュウがイヤじゃなかったら、別にいいんだけどね?」 ………あー……… 「………思い出………ねぇ………胡蝶蘭の話はしたし………あんまり、話すような事ねぇぞ?」 「………そんな事無いでしょう………シュウ達、どれだけ永い間一緒に居たと思ってるのよ………」 「………そりゃ、そうだけど………」 「?」 「………何もせず、ただ一緒に過ごしていただけだぞ?たま~に、地球で過ごしてから帰ってきた俺を、慰めたり、元気付けたり………でも、それ以外はホントに普通の日常だ。ユニだって経験したろう?」 ヒナと修行したり。皆でミウのご飯を食べたり。 「………ホントに?」 「あぁ」 「………平和だったんですねぇ………」 「………あぁ、平和『だった』よ」 ギリ………と、本を持つ手に力が入る。 「「………」」 「人間の脆さ、短命さに哀しみ、もう失う事をしたくなくて………それで、ユニを作り始めたんだ………始めたんだけど………」 少し、遅かった。 「………もしかして、私………私が、最初に、シュウの事嫌いって言って………それで、手間を掛けたから………シュウは、間に合わなかったの………?」 「………違うよ、ユニ。ユニは間に合った、間に合って………俺の事、すごい幸せにしてくれた。間に合わなかったのは、俺が人間に情を抱きすぎたからだ………少し、ほんの少し、人間に深入りしすぎた所為で、生死に対する感情が強くなって………抑えられなくなった」 「………シュウさん………」 「………なんて、哀しい………」 ………今が幸せなだけマシだよ。
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