月夜

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「………蟹くせっ」 「あ、やっと起きましたね?もう………寝ぼすけなんですから、シュウさんは………」 「………?」 ………あれ? 「シュウ、先に晩御飯食べてるよー。ほら見て?香留菜が蟹こんなに採ってきたの」 むぐむぐと蟹を食べながら、大量の蟹を指差すユニ。 「………いや………えぇ?」 ………夢? どこからどこまで? 「釣りの最中に眠るなんて………なんていうか、シュウさんらしいですね………」 ぱきっ、と蟹を割る神流。 「………なんだったんだよ………今の―――」 がっくりと項垂れた。 が、その瞬間、香る。 「………」 さっき抱き締めた、ミウの匂い。 そして、胸元に残る暖かさ。 あと、蟹しゃぶの匂い。 ………あ、最後は違うわ。 「………なんだ、夢なんかじゃなかったのか………」 「? どうしたんですか?」 小さく、誰に聴かせるつもりもない声で呟いたが、耳の良い緋沙には聞こえていたらしい。 「………いや………え、俺だけ?」 『?』 一斉にクエスチョンマーク。 「………俺だけ、か………」 「シュウ?何かあったの?」 「………ミウと、会ってた………」 自分でも信じられない。 『………』 当然、皆に信じられるワケも……… 「ホント!?」 「おぉぉ………?」 あれ?信じた? 「確かに、結構近づいたからなぁ………」 窓を開け、空の向こうの『盾』に手を伸ばす神那。 「………信じるのか………?」 「当然じゃないですか。他でもないシュウさんが言ってる事なんですから」 「………お前ら………」 「………と、いう事がありまして」 「………」 「ユニ?」 急に、思い切り抱き締めてきたユニ。 「………寂しく、ないよ………?シュウ、一人じゃないよ………?」 「………あー………」 ………健気なヤツだ。 「………っ!////」 「ぉ」 更に抱き着く神流。 「………////」 無言で寄り添う励那に 「………」 蟹を差し出す儚。 「………台無しじゃねぇか」 「………愛してるぜ?べいびー」 「あー、そりゃ、どうも………」 ………幸せ者だなぁ。 ………ホント、幸せ者だなぁ……… でも、幸せ者であって、今の俺は、幸せではない。 まだ、幸せには足りない。 足りないピースが、ふたつある。
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